日々の業務において、ISO審査や社内規定のために作成する「力量管理表」が、単なる「提出するための書類」になってしまっていることはないでしょうか。本来、力量管理表は調達部員一人ひとりの強みを可視化し、成長を支えるための大切なツールです。
しかし、扱う品目が多岐にわたり、専門的な知識や経験が求められる調達実務の現場では、日々の納期管理や突発的なトラブル対応に追われ、数年前のデータのまま更新が止まってしまうことも少なくありません。形骸化した管理表を前に、「本当はもっと一人ひとりの実態に合わせた育成をしたい」と感じつつも、日々の忙しさに流されてしまう現状に悩んでいる調達マネジャーも多いはずです。
こうした状況を改善し、調達部員の今の能力を正しく把握して調達部員の底上げを図るためには、力量管理表を「スキルマップ」として再定義し、定期的に更新する仕組みを作ることが、一つの有効な手立てになります。特別なシステムを導入しなくても、採点の基準を見直し、更新のサイクルを決めるだけで、育成の精度は着実に向上するものです。
今回のブログは、ISOのための書類作成で終わらせず、調達部員の強みを引き出し、調達部門の組織力を高めるための「スキルマップ」活用のコツについてお伝えしますので、調達部員との効果的な教育体系づくりの選択肢の一つとしてご確認いただけたらと思います。
今回は、【調達人材育成】ISOのための「力量管理表」で終わらせない!調達部員の強みを引き出し、組織力を高める「スキルマップ」活用のコツについてお伝えしますので、ぜひご覧ください。
【調達人材育成】ISOのための「力量管理表」で終わらせない!調達部員の強みを引き出し、組織力を高める「スキルマップ」活用のコツ
なぜ「力量管理」が必要なのか?ISO9001の要求事項から紐解く
製造業において、品質を維持し顧客の信頼に応えるための国際規格であるISO9001では、業務に従事する一人ひとりの「力量」を管理することが明確に求められています。
しかし、現場では「審査のために書類を揃えること」が優先され、本来の目的が見失われがちです。まずは、規格において「力量」がどのように定義されているのか、改めて確認してみましょう。
7.2 力量
組織は,次の事項を行わなければならない。
a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
b) 適切な教育,訓練又は経験に基づいて,それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
c) 該当する場合には,必ず,必要な力量を身に付けるための処置をとり,とった処置の有効性を評価する。
d) 力量の証拠として,適切な文書化した情報を保持する。 注記 適用される処置には,例えば,現在雇用している人々に対する,教育訓練の提供,指導の実施,配置転換の実施などがあり,また,力量を備えた人々の雇用,そうした人々との契約締結などもあり得る。
【引用元:JISQ9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項】
形骸化を防ぎ、実効性を高める「スキルマップ活用」4つのステップ
ステップ1 実務に即した「スキル項目」の再定義
「購買実務」 → 「ソーシング(最適な仕入先の選定)から発注、検収までの標準プロセスを理解し、一連の実務を停滞なく遂行できる」
「仕入先管理」 → 「仕入先の経営状態やリスクを把握し、安定調達の代替案を立案できる」
「納期管理」 → 「突発的な納期遅延に対し、関係部署と連携して工程への影響を最小限に抑えられる」
「図面理解」 → 「図面の意図を汲み取り、加工の難易度に基づいた適切な見積もり精査ができる」
「交渉力」 → 「単なる値引き要請ではなく、双方にメリットのある論理的な価格交渉ができる」ステップ2 5段階の「客観的な評価基準」の設定
スキル項目を定義した次に重要となるのが、そのスキルをどのように評価するかという「ものさし」の設定です。採点者の主観によって「なんとなく3点」といった評価が下されると、調達部員の納得感は得られず、育成の指針としても機能しません。1点:知識習得中 調達業務の基礎や社内ルールを学んでいる段階であり、見積依頼や発注などの基本操作においても、常に上司や先輩のサポートを必要とする。
2点:一部自走可能 定型的な発注業務などは一人で進められるが、納期遅延の調整や価格交渉といった実務を完結させるには、上司からの具体的な助言や最終確認が欠かせない。
3点:自律的な担当者 担当する品目や仕入先の管理について、標準的な一連の調達業務を一人で過不足なく完結できる。関係部署との日常的な調整も自律的に行える。
4点:課題解決のエキスパート 深い専門知識を持ち、急激な需要変動や仕入先の経営不振といった難易度の高いトラブルに対しても、自ら複数の解決策を立案し、主体的に対処できる。
5点:組織を牽引するリーダー 自身の成果だけでなく、調達スキルの標準化や業務フローの改善を推進できる。また、後輩の調達部員への指導を通じて、組織全体の力量向上に大きく貢献している。
ステップ3 調達部員本人との「認識合わせ(自己評価と乖離の確認)
評価基準が整ったら、次は調達部員本人との対話を通じて「現状の力量」を確定させます。重要なのは、調達マネジャーが一方的に採点結果を通知するのではなく、まずは調達部員本人に自己評価を行ってもらい、その結果を突き合わせて「認識のズレ(乖離)」を確認することです。調達部員の自己評価:4点(エキスパート)
本人の認識:「先日の交渉で、目標以上の値引きを引き出すことができた。自信がある。」
ステップ4 運用サイクルの定例化(「棚卸し」の時期を決める)
半期ごとの定期面談と連動:
上期・下期の評価面談のタイミングでスキルマップを開き、この半年で「できるようになったこと」を確認し、点数を更新する。
担当品目の変更・ローテーション時:
新しい品目や仕入先を担当することになった際、必要となるスキルを再確認し、現状の力量とのギャップを棚卸しする。
大規模プロジェクトの完了時:
新規開発プロジェクトやコストダウン施策などが一段落したタイミングで、その業務を通じて得られた新たな知見を評価に反映する。
運用の際の注意点は、更新作業を「事務的な負担」にしないことです。すべての項目をゼロから見直すのではなく、「前回の面談からどこが変化したか」という差分に注目して対話を行うことで、短時間でも密度の濃い運用が可能になります。
スキルマップを「強み」に変える!調達部員の個性を活かす3つの視点
スキルマップは、単に個人の能力を測るためのものではありません。可視化されたデータをもとに、一人ひとりの異なる持ち味を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることが真の目的です。
視点1 「標準」との差ではなく「得意」に光を当てる
「原価分析」:2点(標準より低い)
「関係部署との調整力」:4点(標準より高い)視点2 強みを「チームの共有財産」にする役割を与える
例えば、以下のような役割を任せることが考えられます。
「取適法遵守」のエキスパート:
法改正などの最新情報を収集し、部内勉強会の講師を務めたり、他メンバーが契約書作成で迷った際の「一次相談窓口」を担当したりする。
視点3 「挑戦の余白」を面談で合意する
例えば、スキルマップの更新時に以下のような対話を行います。
現状の確認:
「今回の棚卸しで、主要仕入先との『定期的な価格交渉』は一人で完結できる3点になったね。」
まとめ
スキルマップを「成長の地図」に変えることが、自律した調達組織への近道です
今回のブログを通じてお伝えしたかったのは、スキルマップを単なる「評価のための道具」に留めず、調達部員一人ひとりの可能性を広げるための「対話の土台」として活用していただきたいということです。形骸化した力量管理表を、実務に即した言葉で書き換え、本人の強みに光を当てるプロセスは、調達マネジャーが部員を深く理解し、その成長を心から応援しているというメッセージそのものになります。
まずは、現在お使いの力量管理表の中から、たった一つの項目だけでも構いません。「購買実務」のような抽象的な言葉を、先ほどご紹介したような「〇〇ができる」という具体的な行動基準へと書き換えてみることから始めてみてください。いきなり完璧なマップを作る必要はありません。目の前の調達部員の今の動きを思い浮かべ、実務に即した言葉を紡いでみること。その一歩が、調達部員の納得感を生む「生きた指標」への第一歩となります。
こうした地道な取り組みの積み重ねは、時間はかかるかもしれませんが、調達部員が自分の役割に誇りを持ち、自ら考え行動する「自律した調達組織」を形作っていきます。厳しい調達環境の中でも、個々の強みを掛け合わせ、共に成長していける調達組織を目指して、まずは一つの項目をアップデートすることから、調達部員と共に新しい「成長の地図」を描き始めていきましょう。
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